【解説書の一部】 六段・春の海
箏曲は世界に知られた日本古典音楽の代表的なジャンルである。
箏曲は、恐らく国内外を問わず、最もよく知られた日本音楽のジャンルの一つであろう。日本風のレストランなどでは判で押したように箏の音楽がBGMに用いられている。多くの場合、器楽曲であるが、歌曲であっても歌の部分はカットされたりしているので、たいていの人は箏曲というと器楽曲だけだと思っているかもしれない。しかし、本来は箏の弾き歌いによる歌曲のほうが圧倒的に多いのである。しかも、江戸時代初期に八橋検校(1614〜85)によって創始されて以来、当道という盲人組織に属する音楽家たちによって専門的に創作・伝承・教習がなされてきたために、盲人の鋭敏な感覚によって繊細な表現法や精繊な合奏法が徹底的に追求され、高度に芸術的発展を遂げてきた音楽種目である。
箏の演奏法は多様であり、繊細な音色を楽しめる。
箏は奈良時代に中国から我が国にもたらされた外来楽器であり、同種の楽器は今日でもアジア各地に存在する。細長い共鳴胴に13本の弦を張ったロング・ツィター族の楽器で、それぞれの弦に箏柱を立てて音の高さを決め、右手にはめた箏爪で弦をはじいて音を出す。単に一本だけでなく複数の弦を箏爪で弾奏したり、弦をこすったり、指ではじいたり、あるいは弾いた後の余韻を揺らしたりと、さまざまな繊細な手法が工夫されている。こうした音色的変化に対する指向は、日本人の音感覚を非常によく反映したものである。
このアルバムでは、一流奏者による箏の名曲ばかり五曲を厳選した。
ここには箏曲として最も代表的な名曲ばかりを5曲収録した。楽器の編成は箏だけではないが、いずれも箏が主奏楽器として活躍する作品である。箏曲草創期の作品から、現代における古典の編曲に至るまで、創作された時期はそれぞれ異なる。もちろん創作動機もさまざまである。しかし、どれもこれも箏の音楽としてはまず筆頭に挙げるべき作品ばかりである。しかも、現代において望み得る最高水準の演奏者による名演である。もはや文句のつけようがない。これこそ箏曲の魅力を存分に楽しめる珠玉のディスクであると自信をもって言える。

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