| 【解説書の一部】 ア・ブリーザ・ド・コラサン 〜心のそよ風〜 |
| 新時代のファド歌手ドゥルス・ポンテス マドレデウスが出演して音楽も担当しているヴェンダースの映画『リスボン物語』が評判を呼んでいます。映画でマドレデウスのテレーザ・セルゲイロの歌を聞いて彼女のファンになった人もたくさんいるようです。ポルトガルの音楽が日本でこんなに注目を集めるのはほんとに久しぶりのことで、おそらく映画『過去を持つ愛情』でアマリア・ロドリゲスの「暗いはしけ」が使われ、ファドと呼ばれる音楽が世界的に広く知られるようになった50年代以来のことでしょう。 マドレデウスと並んで音楽ファンの心をポルトガルの音楽に向けさせるきっかけをつくったもう一人の若い歌手は、このアルバムの主人公ドゥルス・ポンテスです。マドレデウスはクラシックの室内楽的なところもある演奏で、伝統的なファドとはちょっと距離を置いて音楽をやっていますが、ドゥルスはより真正面からファドの伝統を受け止めた音楽で、ヨーロッパ各地や、同じポルトガル語を使うブラジルや、東洋のはずれの日本や韓国で話題を集めています。その姿勢は、彼女の歌声のたっぷりとした節回しばかりでなく、日本でのデビュー作『ラグリマス』で、「川に集う人々」「涙(ラグリマ)」「風変わりな人生」「新しいセヴェラのファド」など、アマリア・ロドリゲスの歌をたくさんカヴァーしていたことにも現われています。このライヴ・アルバムでは、さらに「運命のファド」(アマリアの曲とは同名異曲です)「生命のぬけがら」といったファドもつけ加えられています。 と同時にこのアルバムでは、彼女がファドに新しい音楽の要素を盛りこもうとしていることも強く感じられます。ユーロビジョン・コンテスト出場曲「ポルトガルの心」をはじめ「浜辺に住む少年」や「裏切り者」は英米的なロック/ポップの色彩が強く、「アラブ」や「海の歌」では中近東の音楽との親和性も見られます。「私のところに飛んでおいで」や「ミーニョの7人の女」のような曲には、アンビエント/ワールド・ミュージックに通じる要素もあります。そして、エンニオ・モリコーネによるこのアルバムのタイトル曲で、映画主題歌「心のそよ風」は映画が公開されれば、さらに注目されるのではないでしょうか。 |