【解説書の一部】 カッワーリーの神髄〜陶酔の歌
カッワーリーは、スーフィズム(神秘主義)の祈りの表現と宗教的陶酔の音楽である。
インド・イスラームで育まれてきたスーフィズム(神秘主義)は、祈りの表現と宗教的陶酔(ハール)の手段として、独自の詩と音楽を発展させてきた。カッワーリーは「メヘフィレ・サマー」とよばれる音楽集会の場で、一年中スーフィー(神秘主義者)によって歌われるが、特にスーフィー聖者の命日祭(ウルス)の時にその墓廟(ダルガー)で行われる。また、信者が集まる場所ならどこででも開かれる。
カッワール(歌い手)は世襲の職業演奏家である。
歌い手の多くは世襲の職業演奏家で、その起源と演奏伝統は13世紀の詩人であり音楽家でもあったアミール・フスローにまで遡る。フスローはチシュティー教団と密接な関係を持っていた。ジャーファル・フセインは、北インドのパダーユーンの音楽家の家に生まれ、古典声楽を学んだ後、カッワーリーに転じたが、フスローのレパートリーには定評がある。
カッワーリーは神や予言者や聖者を賛美する歌である。
カッワーりーで歌われるウルドゥー語やペルシア語の詩は、神(アッラー)や予言者(ムハンマド)や聖者をそれぞれ「ハムド」「ナート」「マンカパト」の形で賛美し、また、「ガザル」という定型叙情恋愛詩で神秘的な愛を詠う。
主唱者とコーラスが交互に歌い、手拍子も重要な楽器になっている。
伝統的なカッワーリーは主唱者とコーラスが交互に歌う形を取り、伴奏楽器にはハルモニウム(小型リードオルガン)や太鼓(ドーラクやタプラ)か用いられるが、手拍子も重要な楽器と考えられている。特に太鼓のピートは、聴く者にとっては陶酔するための重要な手段となる。
歌詞が反復されることによって、聴く者を陶酔へと誘う。
音楽としてのカッワーリーは古典ハヤールの伝統を継承している。コーラスによるリフレインと主唱者の技巧的旋律の即興が入り交じり、絶え間なく歌詞が反復されることによって、聴く者は陶酔境へと誘われ、またその精神状態を持続することができる。旋律とともに詩の内容が重要な働きをするので、主唱者には力強い発音が要求される。

戻 る