【解説書の一部】 「淡麗なる中国古箏/姜 小青」

精緻な音の配列による粋な漢民族の音楽。
ペルシャからアラブ、ヒンドゥスター二と、精緻な音のモザイクを創りだした民族は少なくない。しかし漢民族ほど繊密な音の配列を好むのは珍しい。琵琶、二胡、琴、楊琴など、あらゆる絲が乱舞する。幾何学模様のようなフレーズにあって、それぞれの音のなんと個性的なことか。微細なヴィヴラート、大胆なボルタメント、まるで打ち込みのようなアルペジオ、その総てが昇華されて一輪の華になる。記録される事で、遺去を清算してきた漢民族の知恵の結晶がここにはある。古今乗西、あらゆるものを飲み込み、総てを自らの美学のなかに吸収してしまう中国文化の粋が音楽だ。
微細なヴィヴラートと大胆なポルタメント、姜小青の古箏は強烈な個性を放っている。
歴史を背負いながら、時間を超越した華麗なるテクニック。アクロパティックなまでのテクニックを出発点とする彼の地の音楽にあって、姜小青の古箏は強烈な個性を放っている。幼年にして確立された伝統箏曲に注入された同時代音楽のエッセンス。古典であって古典を超え、新曲であって古典の響き。このティスクから聴こえてくるのは、民族音楽こそ持ちうる超時代性、ナショナルだからこそのインターナショナル。今日の東京、ニューヨーク、世界都市のフィルターを潜った伝統音楽が産み出しえた最良の音のサンプルが聴こえてくる。
梅の花の高貴な香りと優雅な姿を3つの奏法とテンポで表現している。
この曲は、晋・隋以来の笛曲。また古箏の曲でもあるが、近年古箏独奏用に編曲され、代表的な作品となった。梅の花の高貴な香りと優雅な姿が、3つの異なる奏法とテンポで表現される。
(文:坂本龍一/原文のまま)


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