| 【解説書の一部】 ナイルのうた |
| アフリカ人のハムザが、イスラム圏を代表する楽器ウードを弾き始めた。 1982年10月18日、お茶の水の全電通ホールでのコンサートのとき、開演前に場内に流れたのが、コーランの朗唱であった。やがてステージに現われたハムザが、おもむろにウードを弾き始めた。いうまでもなくコーランはイスラムの経典でありウードはイスラム文化圏を代表する楽器だ。ハムザの演奏する曲の多くがイスラムの音楽原理に基づいている。そうした表面だけ見ると、ハムザの音楽はまったくイスラム音楽そのもののように思える。だが、ここでちょっと考えておかねばならないことがある。イスラム文化圏というと大概の日本人が、いわゆる中近東−アラビア半島からトルコ、イランあたりを思い浮かべるだろうけれどもそのほかにアフリカ大陸のほぼ北半分がイスラム圏に属しているという事実だ。ハムザは、そのアフリカ大陸のイスラム圏に属する地域の出身だ。彼の音楽は、イスラム的であると同時にまた、アフリカ的でもあると言わなくてはならない。 アフリカとイスラムの共存、それがハムザ音楽なのだ。 コーランの流れるステージに、ウードを持って現われたアフリカ人。この姿が、ハムザの音楽の本質をも表わしていると思う。こういったアフリカ的伝統とヨーロッパ的伝統の違いは音楽だけに見られるわけではなく、文化全般の根底をなす原理の違いなのであり、ハムザの音楽はそういう根本原理においてはアフリカなのではないか、つまり、アフリカがベースでその上をイスラムが覆っているシンクレティズム(二文化並存)型の音楽なのではないかと考えている。 |